大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和29年(う)287号 判決

しかしながら義歯、金冠を嵌入する行為すなわち完成した義歯、金冠を必要あらば修正しながら人体に装着する行為は必ずしも施術者が自らの手でその義歯金冠を直接患者の口中に出し入れすることを要せず患者をしてこれを為さしめて施術者はこれを観察してその適応状況の判断を為す場合もこれを嵌入行為と認むべきものと解せらるるところ、原判決に掲げた証拠によると被告人は原判決別表記載の患者につき同人等のために製作した有床義歯をそれぞれ患者自身の手を以つて嵌めさせ傍においてその適否の状況を観察したものであることが認められるから原判決が被告人の該行為を以つて嵌入行為と認めたことは相当である。所論後段は印象採得、試適の行為それ自体は歯科技工の範囲に属し歯科医業の範囲に属しないものというに在るが右はいずれも直接患者について歯牙、歯根、その他口くうの状態を診察してこれを施すことの適否を判断し患部に即応する施術を要するものであつてその施術の巧拙如何は患者の健康に影響を及ぼす虞があるから当然歯科医薬の範囲に属するものと解すべきである。従つて原判決が右印象採得試適の行為も嵌入行為と共に被告人のなした歯科医業の施術の内容と認定したことは相当であつて原判決には所論の点について事実の誤認はなく論旨は理由がない。

同(B弁護人の論旨)第四点について

本件犯罪はこれを業務犯として一個の事実を以つて公訴の対象としたものであることは起訴状記載の公訴事実の文意に徴すれば明らかである。これを別個の犯罪として併合罪であることを前提として論ずる見解は当を得ない。また裁判官は適当とするときは訴因の変更追加を命じ得ることは刑事訴訟法において明定せられているところであつて原審において訴訟手続に法令の違反があるとの所論はとらない。(イ)所論については前段A弁護人の論旨について説示したとおりである。(ロ)(ハ)裁判官が検察官に対して訴因変更を命ずる場合に具体的にその内容を示して「かように訴因の変更を命ずる」とした場合、検察官が即座に「そのように変更する」との趣旨に述べたときは命ぜられた内容のとおり口頭による訴因の変更があつたものと解するを相当とする。しかして原審における「嵌入」についての訴因変更は原審審理の経過と同公判調書の記載を検討すると全被施術者に対する関係において訴因が変更せられたものと認められることは明らかであるから、これが為めに被告人の防禦権に実質的な不利益を来すものとは考えられない。なお裁判官が訴因の変更を命じ検察官がこれによりそのとおりの訴因を変更した場合には裁判官は改めて右訴因の変更を許可することを要しない。所論後段については既に説示したとおりである。

(裁判長判事 甲斐寿雄 判事 二見虎雄 判事 長友文士)

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